谷川雁

幸か不幸か この世に生まれてきた

おれは 村を知り 道を知り 灰色の時を知った 明るくもなく 暗くもない ふりつむ雪の宵のような光のなかで おのれを断罪し 処刑することを知った 焔の中に炎を構成する 燃えない一本の糸があるように おれはさまざまな心をあつめて 自ら終わろうとする本能の…