フカッチャン
5年ほど前の、ある日。
わたしは映画を観に行きました。
スクリーンには並外れたエネルギーを放っている有機体が居たのです。
嵐のよう。粗削りだけれど。
今しかない
ここしかない
わたししかいない
演じながら喋ってるんだもん。
あなた歳いくつ?
なんでそんなに一途なの?
背負ってるものが違いすぎる。
でもその時は本当はよく分からなかった。まったく分かっていなかった。
気づいたら、それから想像を絶する程の長い長い退屈な時間が過ぎてしまっていたのだった。
退屈な時間ばかりを過ごしていた。
高揚感とは程遠い日々が延々と続くものだとばかり考えていた。
三年と半年ほど経ったある日、脇にはいつも帯刀を隠し持つかのような姿が偶然に目に飛び込んで来た。
わたしは生来弱い。
その反対側にあるしるしの持ち主に弱味を全部持っていかれてしまった。
引き換えにそれで強くなっていった部分のほうは、人の役に立つものだ。
内包しているものを解体してあげる。
時に弱々しく暢気に過ごしながらも自分を信じて行く。
生きているから当たり前なんだよ。
でも、それ以上に血が熱い。
周りがついてこれなくなったらなったで、孤独になってしまうから。
難しい。
人が一人じゃないって。